life_in_technicolor's book blog

本を読んで「あー面白かった、次何読も」だけで終わらないように、思ったこと、考えたことを文章で表現しようと試みています。 解釈は私の勝手なもので、かなり稚拙なものが多いかと思いますが、読んで頂けると嬉しいです^^

 『ウィンダミア卿夫人の扇』 (Lady Windermere's Fan)

早速ですが。

昨日読み終わったのがオスカー・ワイルドの『ウィンダミア卿夫人の扇』(Lady Windermere's Fan)。

 

私はオスカー・ワイルドが大好きです。

この作品以外にも、『嘘から出た誠』(The Importance of Being Earnest)、『ドリアン・グレイの肖像』(The Picture of Dorian Gray) を読んだことがあります。

『ウィンダミア卿夫人の扇』や『嘘から出た誠』に出てくるコメディー要素ももちろん好きなのですが、『ドリアン・グレイの肖像』の暗さというか、不気味さも何か不思議で、感動したのを覚えています。どの作品もおすすめです。

 

さて、今回の『ウィンダミア卿夫人の扇』ですが、恥ずかしながら一回目読んだ時はあまりよく分からなかったというか、

話としては面白かったのですが、ワイルドが結局何を言いたかったのかが分かりませんでした。

そこでもう一度読み返しました。

 

1回目はどうやら電車の中などで少しずつ読んだのが悪かったみたいです。

この作品はあくまでも劇なので、一気に読み通した方が色んな部分が互いにどう関連しあってるかが明確になります。

登場人物が前に言ったことと全く正反対のことを後になってから口にするところとか、

ワイルドっぽくて面白いです。

でもちゃんとその前後のセリフの矛盾に気づかなければ意味がありません。

だからまだ前のセリフを覚えているうちに、一気に読むことをおすすめします。

そんなに長くないのでその気になればすぐ読み終わります。

 

1回目に読んだ時、分からなくて困ったのが、

この作品のタイトルに出てくるウィンダミア卿夫人の扇が何を表わしているのか、です。

そのことを考えながら2回目読みました。

その結果、私は扇が以下の2つのことを象徴していると感じました。

①愛情

問題となる扇は、まずウィンダミア卿から夫人への誕生日プレゼントとして登場します。夫人は、扇に自分の名前が入っていることを気に入り、友達に自慢します。

扇は2人にとって、ウィンダミア卿の夫人への愛情の証なのです。

ところが後にウィンダミア卿がその扇をダーリントン卿の部屋で見つけると、ウィンダミアは夫人に浮気をされ、愛情を裏切られたと勘違いをし、怒りを露わにします。

せっかく渡した愛情の証が他の男の部屋に放置されていたからです。

ウィンダミア卿の誤解を晴らすためにウィンダミア卿夫人をかばい、

責任を全て取ろうとするのが夫人の死んだとされていた実の母親、アーリン夫人です。

 

翌日アーリン夫人が扇を欲しがると、ウィンダミア卿夫人は彼女の正体は知りませんが、昨夜のお礼として喜んでプレゼントします。

 

ウィンダミア卿夫人の名前、マーガレットは母親のアーリン夫人に由来しているため、その名前が入った扇が娘から同名の母親へと移ることによって、今度はこの母子関係の間に新たに芽生えた愛情が描写されています。

ウィンダミア卿夫人は結局劇の最後までアーリン夫人の正体を知ることはありませんが、

彼女に対してあたたかさや親近感を抱いていることに間違いはありません。

 

 

②Fanは実は両義語だった

Fanは英語で扇はもちろん、ファン(サポーター、支援者)という意味もあります。

作品の英文タイトルはLady Winderemere's Fanですので、

ウィンダミア卿夫人を尊敬し、一生懸命接近して、支援をし、正体を明かさず特に何の報酬も求めず去っていくアーリン夫人をウィンダミア卿夫人のファンとも言えると思います。

 

よく考えれば母親ってそんな存在ですよね。

こんなに一生懸命自分のことを応援して、支えてくれるのってお母さんだけですよね。

ウィンダミア卿夫人はアーリン夫人の優しさが母親としての責任感から来るものだとは気付いていませんが、

「母親」というレッテルを取り去ってしまえば、

どのお母さんだってやっていることは同じです。

私たちの一番のファンとして、私たちのことを最後まで見捨てずに、励ましたり、支えたりしてくれます。

 

 

 

なんかすごくスキャンダラスなイギリスのブルジョア階級の話かと一瞬思いきや、

よくよく考えてみるとこういうほのぼのとしたメッセージもあったのかな、

と勝手に解釈しています。

 

すぐ読み終わるし、

オスカー・ワイルドのユーモアが存分に楽しめる作品だと思うので、

是非読んでみてください◎