『横道世之介』
『横道世之介』
吉田修一はまったシリーズ第3段はこの作品です。
今まで読んだ『熱帯魚』や『パークライフ』と比べてライトな感じで、読みやすかったです。
でもその一方で私が好きな吉田修一のシンボリズムや鮮明な描写が少なかったので、
他の作品の方が個人的には気に入っています。
吉田修一の小説に登場するキャラクターたちはダメ男が多い気がします笑
でも嫌いになれない人たちばかりです。
横道世之介は名前だけを聞くととても立派で印象的なのですが、
かなりだらしない男です。
そのため(?)数年後に登場人物たちが横道のことを回想する時、
ほとんどの人が彼の名前を覚えていません。
そして良く見ると「横道」とか、「世之介」の「世」も漠然とした印象の字ですし、
横道は結局色んな人の人生にふらっと登場してすぐ通り過ぎていく
カフェに座ってたら前を通って歩いていく
そんな人間なんだなぁと最後は思ってしまいます。
ていうか結局人生の中で出会って本当に仲良くなる一部の人を除けば、私たちはみなほとんどの人にとって横道世之介のような通行人にすぎないのではないでしょうか。
あと、この本の面白いところは、
主人公横道世之介の視点から語られる部分と、
周りの人物が何年後かに語る横道世之介を思い出すシーンが交互になっていることです。
横道のナレーションは時系列で、約1年間の出来事が紹介されますが、
他の人物のナレーションはむしろ逆時系列というか、
大人になった横道についての情報が徐々に明らかになるようにできています。
ふー、こうやって書いていると十分シンボリックな作品な気もしてきました笑
ちょっと一休みにおすすめの作品です。