life_in_technicolor's book blog

本を読んで「あー面白かった、次何読も」だけで終わらないように、思ったこと、考えたことを文章で表現しようと試みています。 解釈は私の勝手なもので、かなり稚拙なものが多いかと思いますが、読んで頂けると嬉しいです^^

『千の輝く太陽 (A Thousand Splendid Suns)』

『千の輝く太陽 (A Thousand Splendid Suns)』

カーレッド・ホッセイニ

 

カーレッド・ホッセイニは、私が世界で一番好きな本である『カイト・ランナー』の作者です。

本作品もずっと前から気になっていたのですが、かなり描写が過激だと言う評判を聞いていたので、怖くてなかなか手に取れませんでした。しかし最近『カイト・ランナー』の映画版、「君のためなら千回でも」を見てあまりに感動したので今度こそ挑戦しようと思いました。

 

描写は、想定通り、かなり過激でした;;

主にDVや児童虐待、タリバン政権による女性の弾圧についてがとても細かく書かれているので、ちょっと読むのが大変な部分もありました。

 

この作品の中では、社会での女性の立場が最大のテーマになっている気がします。

確かにタリバン政権下のアフガニスタンほど、女性の立場が弱い社会はないかもしれませんが(女性は一人で外出することが出来ない、働くことが出来ない etc.)ある意味女性の抑圧は今もなおどの社会の中でも続いています。

女性が社会によって抑圧されること(家に閉じ込められること、ブルカの着用を求められること etc.)は女性の視野を狭めますが、

女性の情熱や思考力、自由な発想力までもを弾圧することはできません。

そのことが、本作品の中で女性たちが家から脱出し、アフガニスタンの女性たちがブルカから解放されることによって象徴されていると思います。

 

そして『カイト・ランナー』と同様、この本も償いが1つのテーマになっています。

非嫡出子として生まれてしまった娘とその母親の社会への償い、

娘を堂々と愛せなかった父親の償い、

そして大罪を犯してしまった女性の償い。

タリバン政権が制定した、罪に対する刑罰(一種の償い)のリストも、読んでいてぞっとします。

「目には目を」とか言いますが、実際一度犯した罪を償うことは、その罪以上の償いを伴うと言う現実が突きつけられている気がします。

 

エンディングはハッピーエンドと言えばハッピーエンドですが、

ちょっと後味が悪いです・・・

この終わり方が、人生というか現実を反映しているような気がしました。

つまり、みんながみんな幸せになれるものではない。残念なことだけど、これが現実なのだ、と。

 

『カイト・ランナー』も本作品も、私は大好きです。

読むと心が一度強制的に浄化される感じです。どちらも悲しいですが、本当に美しい作品です。

本を読まなくても映画を見るだけでホッセイニの世界観に触れることが出来るでしょう。

 

アフガニスタンにいつか平和が訪れた時、

是非この作品と『カイト・ランナー』の聖地巡礼を実現したいと思います。