『MAKERS』
しばらく小説が続いたので、久しぶりにノンフィクションを紹介します。
著者のアンダーソンといえば、WIREDという雑誌の編集長で、他にも『ロングテイル』や『フリー』などのベストセラーを書いています。
この記事ではまず、このアンダーソンという人物のすごさを訴えたいと思います。
WIREDという雑誌には日本語版もあって、読んでみたことがある人なら分かると思うのですが、取り扱われている内容はかなり幅広く、しかも読者が読める媒体もウェブサイトやタブレットなど、早くからデジタルに移行して行ったことが特徴です。
その編集長、アンダーソンはWIREDを制作している上で得る知識を基に議論を展開し、分かりやすくかつ興味深い事例を私生活や世界経済(どこからこんな情報仕入れてくるの?と思うような中国の全然聞いたことないような企業の事業とか)から引っ張ってきて、書籍にまとめ上げます。
上に挙げた2冊と『MAKERS』は確かにどれもイノベーションをテーマにしていますが、
例えば『フリー』が価格設定に焦点を当てているのに対して、
『MAKERS』は製造やデザインがメインとなっています。
つまり、全く異なる分野や現象の知識が問われているのですが、
アンダーソンはまるで雑誌の記事を書くかのようにしっかりかつおもしろくどちらの本も書きあげています。
その知識の量とプレゼンテーションの方法が素晴らしいです。
さて本書の内容ですが、端的に言うとインターネット・3Dプリンター・オープンイノベーションを通してモノづくりが変わったということです。
かつて何かを発明するとなるとそれは自力で開発・生産し、特許を取得して販売して・・・
という流れでしたが、最近ではネットでアイデアを開示して資金を集めたり、
「分子を売ってビットは無料で配る」つまりハード(プラットフォーム)を製造販売し、ソフト(プログラム)を誰もがアクセス・改良できるようにすることによって製品を改良していったりできてしまうのです。
更に、まだ技術は完成していませんが、3Dプリンターなどが分子レベルでモノを作れるようになったら・・・
またモノ作りは大きく変わってくるでしょう。
20世紀は大量生産、General Motors, General Mills, General Electricなどの総合メーカーが強かった時代ですが、
これからはカスタマイゼーション、1つのことに集中する無数の小さなベンチャーやアントレプレナーたちが活躍し、
どんどん新しいモノを作っていく時代になるでしょう。
科学技術の進歩、ビジネスの仕方の変化、独創的な発想を持った人々の話に触れて、
もしかしたら自分も何か作ってこの世に出せるものがあるのではないかと考えさせられる一冊でした。