『パレード』
『パレード』
またまた吉田修一です。
この作品もまたわけも分からず適当な感じで生きている若者を見事に描いています。
そして後々ふりかえってみると相変わらずのディープさです。
どの登場人物にも若干自分を見いだせるせいか、
誰ひとりとして嫌いになれません。
作品の終盤になると自分も登場人物と仲良くなっている感覚が味わえるのが不思議です。
この作品のエンディングはかなり意外で、
とても驚きました。
残りあと10ページくらいのところで、
どうやって話にオチを付けるのかと思っていたところで、
いきなり「えーっ」って感じです笑
なぜこの本のタイトルは『パレード』なのでしょうか?
本の中に(私が把握している限り)パレードは一切出てきません。
私が思うに、
パレードってお祭り騒ぎの中で色んな人が登場しては去り、
登場しては去り、
その時は一生懸命前を通っていく人を見ているけど、
通り過ぎてしまえば一人一人をどれくらいちゃんと覚えているかといわれると、
ほとんど覚えてませんよね;;
この本に登場するシェアハウスもそんな感じで、
一緒に住んでいて仲もいいのに、
お互いに家にいる時の顔しか知らない、
Appearance vs. Reality的な要素が強調されている気がします。
実はみんな自分の人生の中で知り合う人のことをその時は分かったつもりでいるけど、
その人が立ち去ってしばらく会わないうちにその人と話したことや言った場所を忘れてしまい、
場合によってはその人の存在自体を忘れてしまう。
人生自体がパレードで、私たちは傍観者。
パレード(人生)は止まることなく流れ続けて、
私たちはそのパレードに登場する人(私たちが人生の中で出会う人)をその時はよく見ているつもりだけど、
その人が私たちの視界に(人生に)現れる前何をしていたかとか、
その後どうしているのか、
そもそも普段他の場所や他の人の前ではどのような人間なのか、
実は何も知らない。
さすが吉田修一、『パレード』というタイトル自体が大きな比喩で、
一見濃密だけど実は希薄な現代の人々の人間関係を描いている気がします。