life_in_technicolor's book blog

本を読んで「あー面白かった、次何読も」だけで終わらないように、思ったこと、考えたことを文章で表現しようと試みています。 解釈は私の勝手なもので、かなり稚拙なものが多いかと思いますが、読んで頂けると嬉しいです^^

『フランス人は10着しか服を持たない』

『フランス人は10着しか服を持たない』

ジェニファー・L・スコット

 

久しぶりの投稿です。ずっとさぼっててごめんなさい。

 

 この本は、フランスの料理、ファッション、人、音楽、映画が大好きな私にとって手に取らざるを得ない一冊でした。

 私がフランスの人や文化が好きなのは、一見シンプルで美しいのに裏ではしっかり計算されているからです。そのさりげなさ、洗練されたセンスに本当に憧れます。

 

 この本では、フランスにホームステイしたカリフォルニアの学生が、フランス人とアメリカ人のライフスタイルの違いについて綴って、フランス人のシンプルな暮らしの中には豊かさのヒントがあるのではないか、と主張します。

 私が特に参考にしたいと思った3点を紹介します。

①自分のスタイルを見つける

 フランス人は、自分は何が似合って何が似合わないかしっかりと把握している、と筆者は言います。私たちも果たして、どんな服が自分の魅力を最大限に引き出すのか、分かっているのでしょうか?

 何を身につけるかは、自己表現の方法の一つです。着るものによって、周りの人に与える印象は変わります。

 あなたはなぜその服を着るのですか?服を通してどのような人であると主張したいのですか?今一度考えて、自分のイメージにそぐわないものは、どんどん捨てていきましょう。

②いつもきちんとした装いで

 フランス人は家にいる時もきちんとした格好をして、良いものを普段使いに使うそうです。このようなこだわりが私たちの生活を豊かにします。

 いつもきちんとしていることによって、私たちは自信を持つことが出来ます。

 そもそも私たちはなぜ、人前ではあまり着られないような服やださいモノを持っているのでしょうか。人前で堂々と着れないものなら、手元に置いておく必要がありません。即捨てましょう。

③教養を身につける

 フランスでは、知性が高く評価されるそうです。

 近年日本では、「おバカキャラ」ばかりが注目を浴びて、「インテリキャラ」はなんか理屈っぽい、とっつきにくいイメージが先行している気がします。

 しかし知性は本当は高く評価されるべきで、ちゃんと本の話とか政治の話とか芸術の話が出来る人の方がよほど魅力的だと私は感じます。しっかりと勉強をしてきて、今も継続している人との会話は、奥深く、お互い学べることが多くて楽しいです。

 社会の中で知性を持った人に対する見方が変わり、より尊敬されるようになるべきなのではないでしょうか?

 

 この本には決して難しいルールは書いてありません。どれもちょっと意識をしたら実行できることばかりです。

 この本を参考にしながら生きていくと、私も憧れのフランス人に一歩近づけるかもしれませんね。

『悪人』

『悪人』

吉田修一

 

吉田修一の作品ばかりですみません。

でもこの本を読んで、ますます吉田修一が好きになったので、これからも吉田修一についての記事は増えると思います笑

 

吉田修一はこの作品について、「デビューから10周年。自信を持って『これが代表作だ』と言える作品を書けたような気がします。」と言っています。

私も今まで読んだ彼の作品の中で、この本が一番好きになりました。

 

この小説は、一見ミステリー小説で、殺人事件の紐解きが行われるのですが、

途中から「あれ?」となります。

というのも、後半になるにつれ恋愛小説要素やとても吉田修一らしい文学的な要素、ヒューマンドラマ的な要素が増え、

気づいたら感動のあまり泣きそうになってたりするからです。(私の場合)

 

この本で最も重要なテーマは、「悪人」とは誰なのか?ということです。

「悪人」と言う言葉を聞いて、どのような人間を思い浮かべますか?

残虐な殺人犯ですか?罪のない年寄りを狙う詐欺師ですか?一般人にナイフを突きつけるバスジャックとかの犯人ですか?

この小説では、その「悪人」のイメージが覆されます。

最初持っていた「悪人」の偏見が失われ、逆に被害者だと思っていたいわば「善人」の悪いところが見えてきます。

 

まぁ結論から言うと、私たち一人一人が「悪人」的な要素を持っています。

それが先天的なものなのか、育った環境やそのときおかれた状況によって巻き起こされるのかどうかは分かりませんが。

 

そして善と悪の判断は、誰が下すのでしょうか?

世の中のいわゆる「勝ち組」の人たちが必ずしも「善人」だとは限られません。

それに、この本を読んでいると、人間の知覚や認識のゆがみやずれの大きさに気づかされます。

うそや誤解、隠し事。本人の記憶が誤っていることもあるし、周りの人間が感情を誤って推測してしまうこともあります。

このようにどの情報や認識が正しくて、どれが間違っているか分からない状況で、

どうやって私たちは誰が「善人」で誰が「悪人」だと判断するのでしょうか。

そもそも「悪人」的な要素を少なからず持っている私たちに判断する資格はあるのでしょうか?

 

このように色々考えていると、どんどんネガティブになっていってしまうのですが、

決してあきらめることはありません。

誰かを信じること。大切に思うこと。

すると不思議に一生懸命になれるのです。

小説の中には、「大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。」という言葉があります。

しかし大切な人がいて、その人を信じていると、

一つ一つの行動、一分一分が重みを持って、かけがえのないものに思えてくる。

だから必死になれるのです。

 

この世界はゆがみだらけで、

人間はみな少なからず「悪人」ですが、

その欠陥を踏まえて、誰かを信じること。

そしてその人のために一生懸命生きること。

すると少しは世の中の悪が是正されるかもしれませんね。

『入社一年目の教科書』

『入社一年目の教科書』

岩瀬大輔

 

ライフネット生命代表取締役副社長である岩瀬大輔さんから、

新入社員に向けてのアドバイスが50個、具体例を交えて紹介されています。

 

50個全ての指針をすべてここで紹介するわけには行かないので、

とりあえず「はじめに」で紹介されている3つの原則を紹介します。

①頼まれたことは、必ずやりきる

何事にも果敢に挑戦して、経験値を増やす。

「何があってもやりきるんだ!」という強い意志を持って仕事に臨み、周りの人から信頼され、次の仕事も任されるような社員になる。

 

②50点で構わないから早く出せ

軌道修正は早いほうが良い。

早い段階で仕事を出して、上司に間違っているところを指摘されることによって、すみやかにアップグレードをする。

学校のテストと違い、会社の仕事は「総力戦」つまりどれだけカンニングをしても人にわからないところを聞いても良い。

 

③つまらない仕事はない

どんなにつまらないように思える仕事でも、自分なりの付加価値をつけるように意識する。

基本をしっかりできるようにならなければ、大きい仕事は任せられない。

「つまらない」仕事に対する意識を変える。

 

この本に書かれている指針は、どれも当たり前なようでなかなか実践できないものばかりです。

しかしそうは言っても、実は意識さえすれば、そんなに難しくないことも多いので、誰だってやろうと思えばできるはず、というような小さな心得ばかりです。

 

「入社一年目」というある種のブランドをうまく使えば、たくさんのことを教えてもらえたり、自分から学びにいくチャンスが与えたりすると感じました。

失敗を恐れず、どんどん経験地を高めて、自分をアップグレードしていく。

そのマインドセットでがんばれば、社会人になってからもどんどん成長は続けられるでしょう。

 

思えば高校や大学に入学したときの自分と、卒業時の自分って、まるで別人の用ではありませんか?

3年前・4年前の自分には見えていなかったことが見えるようになっていたり、

あの時は最善だと思って考えたことが今となってはとても愚かに感じられたり・・・

「あのころは若かったから」という言い訳で済ますことも確かにできるかもしれませんが、

自分には3、4年という短い期間内でも一回りも二回りも成長するポテンシャルがある、という風に考えると、

論理的には社会人になってからも3、4年ごとにレベルアップできるはずですよね?

 

「気づいたら3,4年が経っていた」なんてことがないように、

日ごろ訪れるような小さなチャンスもものにして、

特に入社一年目は気合を入れて将来の自分のための土台作りに努めたいところですね。

『東京湾景』

東京湾景

吉田修一

 

吉田修一の恋愛小説っぽい作品を初めて読みました。

彼はやっぱり偉大です。

 

この作品に登場するシンボルを中心に、所感を述べていきます。

東京湾

 この作品に登場する男女は、東京湾を隔てた反対側に住んでいます。この東京湾という隔たりが、彼らの心の隔たりを合わせていると私は感じました。

 彼らは共に少し恋愛に対して捻くれているところがあります。過去の恋愛経験を基に、亮介と美緒が「心の奥のほうで繋がっている」恋愛など存在しないと信じているのです。

 だから、最初は二人の間に心理的な距離があります。美緒は自分の本名を明かそうとしないし、亮介は美緒が嘘をついていることを分かっていながら、真相を聞き出そうとしない。そして互いに東京湾さえ渡れば物理的にはとても近いのに、公共交通手段を使って会いに行こうと思うと相当遠回りをしなければなりません。

 するとりんかい線という、東京湾の下を通る新たな路線ができ、これに乗ると二人の間の移動時間が十分以内に短縮されます。この辺りから、美緒は亮介の部屋に入り浸るようになり、互いを恋人として意識し始めて、まるで普通のカップルのようになります。

 そして最後に、二人は互いの捻くれている部分を共有し合います。亮介は、美緒のもとへ泳いで行ったら、ずっと好きでいてくれるかととてもドラマチックに問いかけます。これが互いに対する不信感を消し去り、真に通じ合える瞬間だと思います。

 

②映画『日蝕

 作品の中で、美緒が見に行って感銘を受ける映画です。映画の中では婚約者と別れたてのモニカが、若い男性と出会い、恋に落ちます。しかし映画の最後で青年が「八時に、いつもの場所で」というのに、指定された時間に二人ともその場所には現れません。

 亮介と美緒も、作品の最後の方で同じようなシーンを演じます。しかし彼らと映画の中のカップルと異なる点は、亮介と美緒は互いに心の繋がりを確認し合えることです。

 この映画を実際に見たことがないので解釈が正しいかは分かりませんが、心が本当に通じ合う恋愛の難しさを表わしているという印象を受けました。恋愛とは、よく映画や漫画や小説で出てくるような、甘酸っぱくて美しいものではありません。本当に「心の奥のほうで繋がっている」恋愛なんて、そうそうないのです。この本も映画も、私たちが忘れがちなこの現実を突きつけている気がしました。

 

 余談ですが、本作品に出てくる青山ほたるが小説を書けなくなるのも、この現実に今まで気づいてこなかったからかもしれません。恋愛の美しい部分だけ書いていても、それが真実ではないため、壁にぶち当たってしまうのです。

 その一方で、ただの甘い恋愛小説ではなく、ちょっとシビアな現実も隠さずに綴る吉田修一は、やっぱり凄いと感じた一冊でした。

『女のいない男たち』

『女のいない男たち』

村上春樹

 

村上春樹の新刊です。

9年ぶりの短編集だそうです。

 

今日は①村上春樹について②この作品について少し書いてから寝ます(ρ_-)

 

村上春樹について

村上春樹は、人によって好き嫌いが激しいと思います。

みんなが騒ぐから、どんな作家だろうと思って一冊読んでみたのに、

わけがわからな過ぎて好きになれなかった、という人も多いでしょう。

実際に私もその一人でした。

村上春樹に対する考え方や彼の作品に対する興味がわいてきたのは、

2冊目からです。

それ以後はこの独特なスタイルにすっかりはまって、最近では新刊が出るたびに買ってしまいます。

 

もし村上春樹アレルギーをお持ちの方がいらっしゃったら、是非すぐに彼のことを嫌いにならずに、後もう一冊くらいチャレンジして頂きたいです。

ちなみに個人的なおすすめは、

長編は『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

短編は『東京奇譚集』です。

 

②本作品について

さて次は本作品についてですが、

男は女なしで実は生きていけない、男たちの人生の方向は実は女によって操作されているみたいなメッセージがあるのだと私は感じました。

特に前半部分ではこの印象を強く受けたのですが、後半からは少しこの解釈があやふやになりました。

幸い最後の表題作「女のいない男たち」で少し解説があって、

なんとなく作品同士の関連がわかるような気がしました。

 

以下引用

「あるときには、一人の女性を失うと言うのは、すべての女性を失うことでもある。そのようにして僕らは女のいない男たちになる。」

「女のいない男たちになるのがどれくらいせつないことなのか、心痛むことなのか、それは女のいない男たちにしか理解できない。」

 

やはり男が女なしで生きていくことは、この上なく辛いことなのです。

その一方で「すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている」という説も作品内では見受けられます。

女性はなんとなく一人でなんとかやっていくことができても、

結局傷つき、一人で生きていくことを強いられるのは、いつも男たちなのです。

 

私が引っかかったのは、村上春樹が「女のいない男」ではなく、「女のいない男たち」という複数形を使ったことです。

どの時代世界中のどこに行っても、「女のいない男たち」は大勢いるという

一つの普遍的な真実を明かされている気がします。

『スティーブ・ジョブス』

スティーブ・ジョブス

ウォルター・アイザックソン

 

前々から気になっていたけど、めっちゃ長いから手に取る勇気がありませんでした。

ついに読んでみようってなって、二週間くらいかけて読みあげました。

 

スティーブ・ジョブスといえば、iPhoneとかiPod, iPadの生みの親であり、

アップルという世界一のブランドの一つの創業者です。

近年ではかなり経営者としてもイノベーターとしても神格化されているところがあるので、

恥ずかしながらこの本を読むまで私はジョブスの本性というか人間性についてほとんど何も知りませんでした。

 

だからこの本を読み始めて、

ジョブスの自己中心的なところや周りの人間へのあたりの強さについて知って、

驚きました。

今でもジョブスのことは尊敬していますし、

特に晩年は少し落ち着いたようで、

経営者としても落ち着いてきたと言えることが出来ると思います。

彼の異常なまでのこだわりがあったからこそ、

iPhoneiPodなどの独創的な商品が生まれたともいえるでしょう。

ただ、この本を読んでからは、ジョブスだけをほめたたえてはならないと感じました。

彼も一人の人間で、周りの人に支えられて初めて成功を収めることが出来たのです。

この事実を私たちも、ジョブスも笑、忘れてはなりません。

 

まぁまぁジョブスの性格の悪さ(言っちゃった)についてはこの辺にしておいて、

ジョブスの偉大なところについて次は話したいと思います。

ジョブスのすごいところは、いわゆる文系・理系の中間地点に立つことが出来て、

これらの考え方をうまく融合することが出来たことだと思います。

優れた技術を持った技術者はいるし、

抜群のセンスを持った芸術家はいますが、

なかなかこの二つを兼ね備えた人はいません。

これがジョブスの強みであり、アップルの製品を他社の類似品と引き離す大きな違いだと思います。

ただ優れた技術力を持つだけでなく、マーケティングのノウハウ(どう売るか、パッケージング、デザイン、広告宣伝などなど)も製品の性能と同じくらい重要だとジョブスは私たちに教えてくれました。

 

そして最後に。

本の最後にも書いてありますが、

ジョブスの生き方を見事に表現したCMが1997年に放映されています。

ジョブスのお葬式では、ジョブスによるナレーション付きのバージョンが上映されました。

ジョブスがアップルにかけた思い、世界にすごい商品を送り出したいという思いを見事に表現していると思います。

 

この本はとても長いですが、

読んでみる価値はあると思います。

必要以上に神格化されてしまっているジョブスを等身大に戻すために、

また経営・マーケティング・事業創生・デザインの教科書として、

ぜひ一度手に取ってみることをおすすめします。

 

どうしても本を読む時間がないという場合は、

仕方がないので代わりにこのCMを見てください!!

https://www.youtube.com/watch?v=_DQBwJKPCBw&feature=youtu.be

『予備校なんてぶっ潰そうぜ。』

『予備校なんてぶっ潰そうぜ。』

花房孟胤

 

「誰でも無料で受験勉強ができるサイト」manavee.comの創設者が、

サイト創設の経緯や現在に至る困難を素直に綴ります。

周りの人との葛藤や自分の中での悩みが鮮明に描かれていて、

とても読みやすいです。

 

独学でプログラミングを勉強して、

今や大学受験のインフラともいえるサービスを考案し、

成長させてきたことはもちろん、

誰もが抱える心のもやもやを正直に文章に綴ることができた花房くんは本当に尊敬に値すると思います。

 

サービスをどう収益化するか、

どう組織のメンバーのモチベーションを保つかなど、

企業などの大きな組織に属していると既に出来上がっていて何も考えていなくても与えられるシステムや仕組みを、

自らの頭と手を使って泥臭い作業を延々と続けながら模索して行く様子が描かれています。

 

ちょっと皮肉に聞こえるかもしれませんが、

たまにはこういうちょっとぐちゃぐちゃした文章を読むのも、

逆に自分の頭を整理する上では良いかもしれません。

 

気分転換におすすめの一冊です。