『青が散る』
『青が散る』
青春系の小説は基本的に苦手なのですが、
この本は上下巻ともすっと読めました。
新設大学のテニス部が題材となっていて、
主人公たちの入学から卒業までの4年間がつづられています。
タイトルの『青が散る』とは、
この4年間の間に咲き誇る主人公たちの青春と、
彼らが在学中に大人になって
その青春が大学卒業とともに幕を閉じる様子を表現しているのだと思います。
この本には二つのパラドックス的な対比が紹介され、大きくテーマとして取り上げられている。
1つ目が「覇道と王道」。
テニスが「上手い」ことと「強い」ことは決して同じではない。
もし王道のテニスで勝てないのであれば、相手を惑わすような覇道で勝負に挑め、
という意味が込められた言葉です。
どうしても勝てない相手や解決できない問題に直面した時、
少し考え方や見方を変えて見て、
新たな切り口で挑んでみる。
これは日ごろから意識したいことですね。
もう1つが「自由と潔癖」。
これが個人的に本小説の中で最も印象に残っている言葉です。
「若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ、潔癖でなくてはいけない。自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか。」
自由は理解できるにしても、
この「潔癖」とは何を意味するのでしょうか?
個人的には「まじめさ」というか、
人生を無駄にしないための一種の積極性だと認識しています。
つまり若い人たちは自由だからと言ってだらだらと毎日を過ごしたり、
自分でやってはいけないと分かっていることを続けたり、
していてはその限られた自由の時間を無駄にしてしまうのです。
だから、その自由を精一杯享受するためにも、
無駄な時間を一切排除するくらいのストイックさ、まじめさ、あるいは「潔癖」さが大事なのではないでしょうか?
この小説はあらすじだけを見ると青春くさくて、
「あーまたこの手の小説か」ってなるのですが、
実際このように発信しているメッセージは深く、
読み応え・考えがいがある作品です。